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行政書士試験の合格率と難易度を徹底解説!実際はどのくらい難しい?

行政書士試験の合格率と難易度を解説!実際どのくらい難しい?

行政書士試験を受けるにあたって「合格率」や「難易度」は気になるところです。一般的に行政書士試験は難関国家資格であり合格が難しいことで知られています。一方で、行政書士に独学でなる人もいるため、他の士業資格と比べると難易度はやや易しい側面もあると言えます。

今回は、行政書士試験の合格率を元に実際の難易度を見ていきましょう。なお、令和5年度の行政書士試験の合格実績の公開は2024年1月31に行われました。最新の合格率を追加しましたので、ぜひご覧ください。

目次

行政書士の合格率は例年10%前後!10人に一人が合格

10人に1人が合格する行政書士試験

行政書士試験の合格データを見ると、合格率は毎年10%前後です。10人に一人のみ合格し、残りの9人は不合格になるため難関の試験といえるでしょう。

  • 行政書士試験の合格率の推移
  • 年齢別の合格率は20代が最も高い
  • 女性よりも男性の方が合格率が高い
  • 東京が最も合格者数が多く合格率も高い

行政書士試験の合格率について詳しく見ていきましょう。

行政書士試験の合格率の推移

年度受験者数合格者数合格率
令和5年度46,9916,57113.98%
令和4年度47,8505,80212.13%
令和3年度47,8705,35311.18%
令和2年度41,6814,470 10.72%
令和元年度39,8214,57111.48%
平成30年度39,1054,96812.70%
平成29年度40,4496,36015.72%
平成28年度41,0534,0849.95%
平成27年度44,3665,82013.12%
平成26年度48,8694,0438.27%
最近10年間における行政書士試験結果の推移

直近10年間の行政書士試験の合格率を見ると、15.72%が最高で、8.27%が最低です。この期間の合格率には約2倍の差があり、試験の難易度が年度によって大きく変わることが分かります。

特に目を引くのは平成26年度であり、合格率が8.27%と非常に低かったです。この年は新試験制度導入後初の補正措置があり、合格基準が180点から166点に引き下げられました。

背景には、民法の択一問題の難易度上昇があります。ただし、平成26年度の民法問題は現行法の改正前のものなので、現在の受験生は特に気にする必要はありません。

他の傾向として、合格率が大きく下がった年の翌年は、通常合格率が上昇することが挙げられます。例として平成27年度では、合格率が9.95%から13.12%へと大きく跳ね上がりました。このことから、合格率が下がった年の次の年は受験のチャンスと言えるでしょう。

行政書士試験は年によって合格難易度が大きく異なります。直近の合格率に大きな変動はありませんでしたが、令和5年度の合格率は13.98%と高くなりました。これまでの傾向を考えると、令和6年度の合格率は下がる可能性があります。合格率の変動を受験戦略に活かし勉強していきましょう。

年齢別の合格率は20代・30代が高い

属性合格率
10歳代 以下8.20%
20歳代16.92%
30歳代17.84%
40歳代14.52%
50歳代11.45%
60歳代 以下8.48%
最近3年間における行政書士試験の受験者・合格者の属性

令和5年度の行政書士試験を年代別に見ると、30代が最も高い合格率を記録しています。30代の合格率は17.84%であり、20代も16.92%と比較的高い合格率が特徴です。20代~30代の合格率が高いことが分かります。一方で、40代は最も受験者数が多い年齢層でありながら、40代以降の合格率は徐々に下がっていきます。50代の合格率は11%、60代で8%となっています。

この傾向は、年齢が上がるにつれて暗記力が低下することに関連していると考えられます。法律系の試験では暗記力が重要であり、年齢が高くなるほど合格するのが難しくなる傾向があるようです。

そのため、行政書士の資格を目指す人は、できるだけ若いうちに試験の準備を始めるのがおすすめです。特に20代の大学生は、暗記能力が高い上に、社会人に比べて勉強時間を多く確保できるため、試験合格のチャンスを高めるのに理想的です。行政書士を目指すなら、早めに学習を開始しましょう。

女性よりも男性の方が合格率が高い

年度男性合格率女性合格率
令和5年度14.65%12.61%
令和4年度13.17%9.89%
令和3年度11.77%9.86%
令和2年度11.12%9.76%

行政書士試験では、どの年代でも男性の合格率が女性よりも高いという傾向が見られます。具体的には、令和5年度における20代男性の合格率が14.65%に対し、女性は12.61%という顕著な差があります。

男性の方が合格率が高い現象は、他の年代においても同様です。このような男女間の合格率の差は、司法試験など他の試験でも見られる一方で、最近では医学部の合格率で女性が男性を上回るケースもあります。したがって、性別による合格率の差の具体的な要因ははっきりとしていません。

考えられる理由の一つとして、行政書士試験への取り組みに対する姿勢の違いがあります。男性受験者の数が女性よりもほぼ倍になっており、男性の方が行政書士としての興味やキャリアアップに対する意欲が強いと考えられます。

結果として、これらが難しい試験勉強を乗り越える原動力になっているかもしれません。近年では女性の行政書士も目立ち始め、受験者数も増加しているため、将来的には男女間の合格率の差が縮まってくる可能性もあります。

東京が最も合格者数が多く合格率も高い

都道府県合格率
東京都16.39%
大阪府14.59%
沖縄県7.75%
令和5年度行政書士試験/都道府県別試験結果一覧

行政書士試験の合格率を都道府県別に見ると、令和5年度では東京が最も合格率が高く、16.39%です。これに対して、最も合格率が低いのは沖縄県の7.75%です。また、受験者数が東京の次に多い大阪府は、合格率は14.59%とさほど高くないことから、東京の合格率の高さが特に目立ちます。

この傾向の一因としては、行政書士試験には大学生も多く受験していることが考えられます。東京には多くの難関大学があり、難関大学の学生が多く受験しているため、その影響で東京の合格率が全国的に高くなっている可能性があります。

しかし、地域別の合格率はあくまでも傾向のため、行政書士試験の勉強をする際には気にしないでいいでしょう。

合格率が50%を超える通信講座・予備校もある

行政書士試験の合格率は平均で約10%ですが、一部の人気通信講座や予備校では、受講生の50%が合格している講座もあります。例えば、フォーサイト行政書士講座では、全国平均の約4倍近くの合格率を誇っています。合格率を高めるためには通信講座や予備校の利用もおすすめです。

行政書士の合格率が低い原因は問題の難易度の高さにある

行政書士試験の合格率の低い理由は、問題の難易度の高さにあります。専門的な法律の学習は、初学者にとって難しく内容を理解するのも簡単ではありません。また試験範囲が広く膨大な知識を学ばなければいけないことも合格率の低さに起因しています。

さらに、合格率は、試験の申し込みをした人から算出されているため、実際に受験することなく、勉強の段階で挫折してしまった人たちを考えると、さらに合格率は低くなると考えられます。具体的に、行政書士試験の受験科目の特徴について見ていきましょう。

行政書士試験の受験科目は合計6科目

行政書士試験では、合計6科目が出題され「法令等科目」「行政書士の業務に関し必要な基礎知識(旧:一般知識等科目)」の2つの大きなカテゴリに分けられています。

法令等科目には、基礎法学、憲法、行政法(行政不服審査法、行政手続法、行政事件訴訟法、国家賠償法等を含む)、民法、商法の5つの科目が含まれています。これらは行政書士業務を行う上で必要な基本的な法律知識をカバーしています。

一方「行政書士の業務に必要な基礎知識」は、政治経済社会、情報通信・個人情報保護、文章理解の科目が出題されます。2024年の改正により、一般知識等科目は「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」を含む内容に更新されました。

勉強する際には、これらの科目の内容に応じて優先順位を設定することが大切です。特に法令等科目は、実務に直接関わるものであり、法律科目を学ぶ上での難易度も高いため、これらに重点を置いて勉強していきましょう。

法令等科目は民法と行政法の攻略がカギ

法令等科目には5種類の科目があり、難易度や配点がそれぞれ異なります。中でも最も難易度が高いとされるのは商法です。商法は内容が複雑で範囲も広いにも関わらず、配点が少ないのが特徴です。

試験で出題されるのはわずか5問だけであり、多くの時間を割いて勉強するには割に合わないともいえます。中には、商法科目を「捨てる」人もいます。しかし、商法を完全に捨てるのはおすすめできません。商標については、基本的な部分のみを学び、少なくとも1~2問は正解できるようにしておくことが望ましいです。

法令等科目の攻略の鍵は、範囲が広く配点も重い「民法」と「行政法」にあります。これらは行政書士として実務を行う上で基礎となる非常に重要な科目です。確かに理解するのが難しい単元もありますが、深い理解を目指すことが重要です。しかし、行政書士試験では全ての知識を完璧に把握する必要はなく、選択式の問題が解ける程度の理解があれば十分です。

内容によっては、理解に苦しむ箇所がありますが、無理に全てを完璧に覚えようとしないことも大切です。合格に向けて優先順位をつけて効率よく勉強を進めることが大切です。

一般知識等科目は対策が難しい

2024年に一般知識等問題が改正されたことにより、行政書士試験の一般知識等科目の対策がより難しくなりました。

改正された試験範囲には、従来の政治・経済・社会の一般知識等に加えて、新たに「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」が含まれるようになりました。行政書士の実務において重要な行政書士法や戸籍に関連した問題も出題されるようになっています。

一般知識等科目は、広範囲にわたる試験範囲であり、勉強が難しいと言われています。満点を狙うことは現実的ではなく、過去に頻繁に出題された問題を重点的に把握しておき最低限の点数を取ることが重要です。

対策の難易度が高いことから、一般知識等科目の勉強に過度な時間を割くよりも、法令等科目により多くの時間を割くことが大切です。

出題形式は「5肢択一」「多肢択一」「記述式」の3種類がある

行政書士試験の出題形式

行政書士試験の出題形式には「5肢択一」「多肢択一」「記述式」の3種類があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。

5肢択一形式は全ての選択肢を理解して勉強する

5肢択一形式では、5つの選択肢の中から正しいもの、または誤っているものを一つ選びます。完璧な知識がなくても正答の可能性がある点が特徴です。勉強する際には、各選択肢について「なぜこの選択肢が誤っているのか」または「正しいのか」を理解できるようにすることが重要です。

多肢択一形式は法律の全体像を理解すれば解ける

多肢択一形式では、条文や長文の一部に空欄があり、約20個の語句の中から適切なものを選びます。この出題形式では、法律の全体像を把握していると答えやすくなります。勉強する際は、各論だけでなく、関連する法律の全体像をイメージしながら進めることが大切です。

記述式は合否を分ける重要な問題

記述式は、40文字程度で民法や行政法に関する問題に答える形式です。最も難易度が高いとされています。法律用語をゼロから思い出してアウトプットする必要があります。

記述式の特徴としては部分点があることも挙げられます。普段の勉強では、記述式で出題されそうな単元や用語は、文章で説明できるように意識しながら勉強することが大切です。このように、各出題形式に応じた適切な勉強法を取り入れることが、合格への近道となります。

合格基準点は法令等科目122点、一般知識等科目24点、合計180点以上

行政書士試験の基準点

行政書士試験の合格基準点は下記の3つです。

  • 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、122点以上である者
  • 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、24点以上である者
  • 試験全体の得点が、180点以上である者

行政書士試験は絶対評価制であり、毎年同じ基準をクリアすれば合格となります。試験全体の6割以上を獲得することが必要です。絶対評価の特徴として、試験の難易度によって合格率が変動することが挙げられます。

難しい年は合格が難しくなり、逆に易しい年は合格率が上昇します。難易度が特に高い年には、補正措置が行われることもあり、合格基準点が下がることで一定数の合格者が確保されます。

注意が必要なのは一般知識等科目の合格基準です。この科目の基準点は比較的低いですが、苦手な受験生が多くいます。

法令等科目で高得点を取っていても、一般知識等科目で合格基準に達しなければ不合格となるため注意しましょう。なるべく早い段階で過去問題や模擬試験を解き、自分が合格基準にどれくらい近づいているかを把握しましょう。

行政書士試験は難関資格!他の士業資格との比較

行政書士と他の士業資格の比較

行政書士試験は、難関資格の一つですが、法律系の国家資格の中では比較的易しい部類に入ります。他の法律系資格である「司法書士」や「税理士試験」と比較すると、行政書士試験の難易度はやや低めですが、それでもかなりの勉強時間が必要です。

司法書士や税理士試験は合格率が数パーセントで、約3,000時間の勉強が求められるのに対して、行政書士試験は合格率が約10%で、800~1000時間の勉強が必要です。行政書士試験は法律系資格の中で入門レベルに位置づけられているといえるでしょう。

また、試験の合格基準も異なります。例えば、司法書士試験は相対評価方式であり、上位の受験者のみが合格するシステムです。試験自体の難易度よりも受験者間の競争が激しいため、相対評価方式の試験は一般的に難易度が高いとされています。

行政書士試験を含む法律系国家資格は専門性が高く、合格すれば多くの人に「すごい」と評価されるでしょう。

社労士と司法書士は行政書士のステップアップ資格

行政書士に近い資格として「社労士」と「司法書士」が挙げられます。これらの資格は、試験内容や実務の面で行政書士と類似している部分が多く、行政書士に合格した人が次のステップとして挑戦することがあります。

特に司法書士の場合は、行政書士試験で学んだ民法や憲法、商法などの科目が重複するため、勉強しやすいといえるでしょう。しかし、同じ科目であったとしても、司法書士試験で問われる問題は行政書士試験よりもかなり難しいため注意が必要です。

難関国家資格の行政書士に合格した後、さらに難易度の高い資格を目指す人は、社労士や司法書士がおすすめです。

行政書士試験は大学受験の偏差値で比べるとMARCHクラス

行政書士試験の難易度を大学受験の偏差値で比較すると、関東の難関大学グループであるMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)クラスに相当すると言えます。関西地域で例えるならば、関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)が近いでしょう。

ただし、この比較はあくまで難易度のイメージを理解しやすくするためのものです。行政書士試験は、学歴に関わらず、様々なバックグラウンドを持つ人々が活躍している資格です。

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