「行政書士試験は独学で十分」「初心者でも独学3か月で合格できる」といった声がよく聞かれます。実際のところ、行政書士は独学で合格できるのでしょうか?今回は、令和元年度の行政書士試験に合格した私が行政書士の独学における勉強時間・スケジュールについて解説します。
行政書士の独学は少数派だが合格を目指せる
行政書士は、予備校や通信講座の利用が一般的ですが、独学で勉強し合格する人もいます。独学で合格を目指す上で大切なポイントをご紹介します。
- 通信講座や予備校を活用して合格する人の方が多い
- 独学は勉強の質が重要!おすすめの勉強方法
- 独学者に人気の参考書・テキスト3選
- 独学の勉強時間の目安は1,000時間!
- 3か月・6ヶ月で合格できる勉強スケジュール
- 一発合格・短期合格を目指す人は通信講座・予備校の活用がおすすめ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
通信講座や予備校を活用して合格する人が多い
行政書士のような難関国家資格は、独学よりも通信講座や予備校を活用した方が合格しやすいと言われています。行政書士試験の内容は難しく、戦略的に勉強していく必要があります。予備校や通信講座は過去の試験内容を徹底的に研究し、最適な学習方法を作り出しています。
行政書士試験の合格率は例年約10%前後と低いですが、一部の人気講座では有料受講生の合格率が50%を超えることもあります。勉強効率の観点においては、独学よりも通信講座や予備校を利用する方がいいと言えるでしょう。
しかし通信講座や予備校を利用して合格した人の中には「独学でも合格できたかもしれない」と感じる人もいます。これは、個々の学習スタイルや能力によって異なるため独学の方が合う人も一定数います。
独学は勉強の質が重要!勉強の順番のおすすめ
行政書士試験を独学で合格したい場合、勉強の質と正しい方法が大切です。独学では、どのように勉強するかが合否を左右することが多く、自己流の勉強方法では、試験であまり出題されない範囲に力を入れてしまい、結果的に遠回りをしてしまうこともあります。
そのため、まずは効率的な勉強の順番を考えることが重要です。他にも、学んだことをしっかりと定着させるためには、アウトプットの練習量を増やすことが欠かせません。
- 配点の大きい科目から勉強する
- インプットよりもアウトプットの練習に時間を割く
独学で勉強する際には、勉強方法について学んでおきましょう。
配点の大きい科目から勉強する
行政書士試験は科目によって配点が大きく異なります。法令等科目における行政法の配点比率は46%、民法は31%となっており、これら二つの科目だけで全体の77%を占めています。つまり、行政法と民法を攻略することが合格の鍵となります。まずは、行政法と民法を中心に学習計画を立てましょう。
具体的には、民法から始め、その後に行政法を学びます。そして、基礎法学、憲法、商法と進み、最後に一般常識等の科目に取り組むという流れがおすすめです。勉強の順番を間違えると、多くの知識を身につけても、試験で得点を得ることが難しくなります。配点の高い科目を優先して勉強していきましょう。
インプットよりもアウトプットの練習に時間を割く
行政書士試験の範囲は広く、覚えるべき知識が膨大です。しかし、試験には一定の出題傾向があり、毎年似たような問題が出題されます。そのため、まずは知識を学ぶ段階をできるだけ早く完了させることが重要です。そして、その後の時間を問題演習や過去問題を解くアウトプットの練習に割きましょう。
問題を解き、インプットした知識を実際に使ってみることで、その知識が記憶に定着し、また出題傾向に対する理解も深まっていきます。出題傾向の理解を深めた上で、改めて教材やテキストを見返すと、前回とは違った角度から理解を深めることができます。
独学者に人気の参考書・テキスト3選
行政書士試験を独学で挑む際、参考書やテキスト選びは慎重に行いましょう。市販の有名なテキストであれば、合格に必要な知識は十分得られます。しかし、各テキストにはそれぞれ特徴やこだわりがあります。テキストの特徴を掴んで、自分にあったものを選びましょう。
- 出る順行政書士 合格基本書
- 合格革命 行政書士 基本テキスト
- うかる! 行政書士 総合テキスト
問題集は、テキストと同じ出版社のものを利用しましょう。問題集や過去問にテキストの参照すべきページがリンクされているため、学習しやすくなります。
出る順行政書士 合格基本書
「出る順行政書士 合格基本書」は、東京リーガルマインドLECの出版です。LECは、法律資格の予備校として有名であり、行政書士試験のみならず、長年にわたり司法試験の教材開発も手がけています。そのため、法律に関する解説には定評があります。
テキストの特徴は、シンプルで落ち着いた配色にあります。青を基調としており、多色使いのテキストが苦手な人にとっては、集中して学習しやすいデザインです。解説も分かりやすく初学者も理解しやすいといえます。
合格革命 行政書士 基本テキスト
「合格革命 行政書士 基本テキスト」は、早稲田経営出版(TAC出版)の定番テキストです。このテキストは、独学での合格をコンセプトにしたテキストであり、初学者でも勉強しやすい工夫がなされています。内容は初心者にも分かりやすいように丁寧に説明されており、法律の基礎から詳しく学ぶことができます。
みんなが欲しかった! 行政書士の教科書
「みんなが欲しかった!行政書士の教科書」は、通学予備校として有名なTACのテキストです。このシリーズは、簿記などの比較的取得しやすい資格試験で人気を集めています。
フルカラーで制作されており、イラストや図表を多用しているため、重苦しく感じられがちな法律の勉強をより身近に感じさせ、勉強しやすい工夫がされています。一方で、配色が多いため好みが分かれることもあります。気になる方は、まずは試し読みをしてみましょう。
一発合格・短期合格を目指す人は通信講座・予備校の活用がおすすめ
行政書士試験の合格は独学でも可能ですが、時間が限られている、または確実に合格したいと考えている人には、通信講座や予備校の利用もおすすめです。おすすめの行政書士通信講座の中には、受講生の合格率が平均よりも約4倍高いものがあります。
わかりやすい解説と効果的なカリキュラムが高い合格実績の秘訣です。講座の利用には費用がかかりますが、合格の可能性を少しでも高めるための価値ある投資と言えます。
予算が限られている場合は、比較的安価な動画講義のみの受講もおすすめです。例えば、スタディング行政書士講座は3万円台から受講でき、独学との併用により、効果的な勉強ができます。
行政書士の勉強時間の目安は1,000時間
行政書士試験の合格に必要な勉強時間は、一般的に800~1000時間とされています。独学で学ぶ場合は1000時間を目安に考えると良いでしょう。教材選びから勉強方法の確立まで、全てを自分で行う必要があるためです。仮に、毎日勉強するのであれば1年間で約2.7時間の勉強が必要です。
ただし、必要な勉強時間は学習者の素養や法学部出身者等によっても異なります。法学部出身者や以前に法律関連の資格勉強を経験したことがある人の場合、600時間程度での合格もできるでしょう。
また、一発で行政書士試験に合格できなかった場合は、来年度の試験に向けてさらに勉強時間が必要になることも頭に入れておきましょう。
3か月・6ヶ月で合格できる勉強スケジュール
行政書士の勉強するタイミングによっては、11月の試験まで3か月や6か月しかないといったことがあります。次年度の受験を目指して本年度は試験の様子を見る「記念受験」を選択することも一つの方法です。3か月以上の勉強期間が残っている場合、効率的な勉強スケジュールを立てて短期間での合格を目指すのがおすすめです。
- 3か月で合格するならアウトプットを中心に毎日勉強する
- 6ヶ月は現実的な短期合格における勉強期間
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3か月で合格するならアウトプットを中心に毎日勉強する
3か月間で行政書士試験の合格を目指す場合、毎日6~8時間の勉強が必要です。3か月間勉強すると、総勉強時間は約540時間から720時間であり、合格に必要な知識を身につけることは十分可能です。しかし、毎日6~8時間の勉強は簡単ではなく相当の覚悟が必要です。
また、3か月という限られた期間での合格を目指すには、勉強のスケジュールを厳密に管理することが大切です。具体的には、1か月目には民法と行政法のテキストと過去問を一通り学習することを目標にしましょう。
短期間で合格するための鍵は、テキストでのインプットよりも問題集や過去問を使ったアウトプットを中心にすることです。2か月目以降は、実際の試験に近い形式で問題を解きながら、間違えた部分や理解が不十分な箇所を重点的に学習していきます。
インプットとアウトプットをバランス良く組み合わせることで、限られた時間の中で合格を目指しましょう。
6ヶ月は現実的な短期合格における勉強期間
6か月での行政書士試験の合格は、短期合格といえます。6か月での合格は難しいと感じられるかもしれませんが、実際には半年で合格する受験生も多く、現実的な目標と言えます。
具体的な、おすすめの勉強スケジュールとしては、初期段階では毎日2~3時間の学習を目安にし、試験の直前期の1~2か月前には、1日あたり8時間程度の集中的な勉強を行うことがおすすめです。勉強の科目としては、民法と行政法を中心に勉強していきます。
これらの科目は試験で高い配点を占めており、まずはこれらの科目を中心に勉強し、合格点に近づけることを目標にします。試験が近づいてきたら、他のマイナー科目にも手を広げていきましょう。
6か月間の勉強では、配点の高い科目を優先し、難しい問題に深入りしすぎないことも大切です。難問を解くことにこだわりすぎると、他の範囲の学習に割ける時間が減少してしまいます。全体的な試験範囲を効率的にカバーすることが限られた時間内での成功への鍵となります。
行政書士の独学のメリットとデメリット
行政書士試験の独学には、受験費用が安いといったメリットがある一方で、勉強効率が悪くなるデメリットもあります。メリットとデメリットをそれぞれ踏まえた上で、独学で勉強を続けていくのかを判断しましょう。
独学のメリット
独学の主なメリットは、受験費用の安さと勉強のしやすさにあります。
- 受験費用が抑えられる!テキスト費用の総額は約7,000円
- 予備校に通う必要がなく忙しい社会人も勉強しやすい
途中から通信講座や予備校の利用への切り替えもできるため、まずは独学で勉強するのもいいでしょう。
受験費用が抑えられる!テキスト費用の総額は約7,000円
独学で行政書士試験を受験する大きなメリットの一つは、受験にかかる総費用を大幅に抑えられることです。一般的に、予備校や通学講座を利用する場合、受講料は10万円から25万円程度になります。
これに対して、独学では市販のテキストや問題集の購入のみで済むため、合計の費用が約7000円程度と非常に安く抑えられます。予算をかけずに合格を目指したい人にとって、独学は非常にお得な勉強方法です。
予備校に通う必要がなく忙しい社会人も勉強しやすい
独学には、忙しい社会人にとって大きなメリットがあります。自分の生活スタイルやペースに合わせて勉強できるため、高い柔軟性があります。
予備校に通う場合、校舎までの往復や講義が始まるまでの待ち時間など、多くの時間を要しますが、独学ならそういった時間は必要ありません。天気の悪い日や特定の季節でも、予備校への移動に関するストレスを感じることなく、自宅や好きな場所で自分のタイミングで勉強ができます。これにより、仕事やプライベートと勉強のバランスを取りやすくなり、時間を効率的に使うことができます。
独学のデメリット
独学のデメリットは、一人で勉強するが故の勉強効率の悪さにあります。勉強に自信のある方は、独学での勉強がおすすめです。デメリットを踏まえた上で、独学での勉強について考えてみましょう。
- 学習効率が悪くなり不合格の可能性が高まる
- モチベーションが保ちにくく挫折しやすい
- 一般知識の対策がしにくい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
学習効率が悪くなり不合格の可能性が高まる
独学のデメリットには、学習効率の悪さがあります。独学では、勉強の順番や各科目に割く時間、学習内容など、全て自分で決めなければなりません。
このため、どの内容をどのように学ぶべきか、計画を立てる際に迷ったり、悩んだりすることが多くなります。また「選んだテキストの内容を誤って覚えてしまう」もしくは「内容の理解に思ったよりも時間がかかる」などの問題も生じる可能性があります。これらの状況は学習効率を下げ、不合格のリスクが高まってしまいます。
一方、予備校や通信講座では、専門家によって作られた効果的なカリキュラムに従って学習を進めることができます。これにより、勉強計画に関する不安が解消され、集中して効率的に勉強できます。
したがって、自分で計画を立て、管理することに自信がある人には独学がおすすめですが、より効率的にしたい人は独学以外の勉強方法を検討しましょう。
モチベーションが保ちにくく挫折しやすい
独学で勉強しているとモチベーションが保ちにくいことがあります。一人で勉強していると、やる気に満ち溢れていても、数か月の勉強の内に、モチベーションが下がってくることが珍しくありません。
一方で、予備校であれば、同じ目標を持つ他の受験生が周りにいるため、自然と勉強へのモチベーションが高まります。また、予備校に通うこと自体が一種のルーティンとなり、定期的に勉強する習慣が身につきやすくなります。
一般知識の対策がしにくい
行政書士試験の一般知識問題は、その範囲が広いため、独学での対策が難しいとされています。特に過去問題の分析だけでは、高得点を狙うのが難しいこともあります。
市販のテキストを使って勉強できますが、内容が広範にわたり、それにも関わらず配点が比較的低いため、勉強のコストパフォーマンスが悪かったりします。
これに対し、通信講座では動画などの視覚的な教材を使って解説されるため、理解しやすくなります。特に、知見の無い分野であっても、テキストだけを読むよりも理解しやすいというメリットがあります。
行政書士試験の独学以外の勉強法
行政書士の勉強には、独学以外に「通学予備校」と「通信講座」の利用があります。ともに独学よりも費用がかかるため、それぞれの特徴を把握しておきましょう。
- 通学予備校は勉強の習慣が身につくが受講料が高い
- 通信講座はコスパがいい!自宅にいながら受講できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
通学予備校は勉強の習慣が身につくが受講料が高い
通学予備校では、駅の近くにある予備校の校舎に通って勉強をします。従来の一般的な学習スタイルであり、他の受講生と共に勉強できるためモチベーションを維持しやすく、集中して勉強できます。しかし、一方で通学予備校の大きなデメリットは受講料の高さにあります。通常、受講料は20万円から25万円程度かかるため、経済的な負担が大きいですが、本格的に勉強したい人にはおすすめです。
通信講座はコスパがいい!自宅にいながら受講できる
通信講座は、最近人気の勉強方法です。スマートフォンやパソコンを利用して動画講義を視聴しながら勉強を進めます。スマートフォンを使うため「いつでもどこでも高品質の講義」を受けられます。また、問題集をスマートフォンでゲーム感覚で解くこともでき、飽きずに学習を進めることができます。
通信講座の大きなメリットは、コストパフォーマンスの良さにあります。通学予備校と比較すると、受講料はかなり安価で、多くの講座が10万円以下です。
さらに、動画講義だけを利用するプランを選べば、費用をさらに抑えることもできます。通信講座は自宅で快適に勉強を進められる上に、経済的な負担も少ないため、多くの人におすすめです。
行政書士試験の独学に関するよくある質問と回答
最後に、行政書士試験の独学に関するよくある質問と回答についてご紹介します。
- 独学の勉強に厳しさを感じています。どうすればいいでしょうか?
- 高卒でも独学で行政書士に合格できますか?
詳しく見ていきましょう。
- 独学の勉強に厳しさを感じています。どうすればいいでしょうか?
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独学で勉強していて行き詰まりや厳しさを感じる場合は、勉強方法の見直しを考えましょう。特におすすめなのが、動画講義での勉強に切り替える方法です。
通信講座の動画講義だけのプランに申し込むことで、一般的な通信講座の全プランを利用するよりも費用を抑えることができます。
- 高卒でも独学で行政書士に合格できますか?
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行政書士には受験資格がないため、学歴に関係なく受験できます。 実際に、多くの高卒の方が独学で行政書士試験に合格しています。
行政書士試験は、法律の知識が無い人も多く受験します。法学部出身者だけでなく、さまざまな背景を持つ人々が受験するのが特徴です。大切なことは、学歴ではなく試験に必要な知識をしっかりと学び、効率的に勉強することです。